禿つちやん ―「あの人に届けた挑戦状」 another story vol.3―
 親讓りの無鐵砲で大人になってからも損ばかりして居る。ピラルクのグリルを作るために一週間以上もアマゾン河に滯在した事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。商会の納品がピラルクのグリルになつたら良いと云つていたら、本當にそうなつてしまつたのだ。フレの一人が冗談に、いくらレストラン商會と威張つても、ピラルクのグリルを納品する事は出來まい。と云つたからである。やつとの思いで必要數を整えたが、商會員でもまたやりたいと思ふ者はそうは居るまい。
 これもまた商會の納品生産會で、骨附き羊肉のワイン煮込みを一萬皿以上拵へた事がある。商會で一萬皿以上作れるかと誰かが云い出したら、何だ一萬皿くらい此通りだと余裕で拵へてしまつた。幸い人気料理だつたのと値段を安く押さえて賣つたのとで、無事全部賣り切れた。但しこの記録はおそらく當分は抜かれぬ。

 商會では時々イベントがあつて、今は麻雀大會を行つてゐる。大會の參加者が料理を摘んでくれるので、頻繁に補充しなければならぬ。麻雀の合間に手輕に食せる物が良い。しかし同じ料理ばかりでは詰まらぬ。トツピングも重要だ。店長もそれが當り前だと云ふ樣な顏をしてゐる。よくもまああんなに人使ひが荒くて店長が勤まるものだが、店員のあんず嬢の説によると「店長は皆を使つている積りで實は使われてるのに気附いて居ないんだよー」との事である。成程その通りかも知れぬが、そうは云つても大會運營で多忙な店長に代わつて店員が料理を補充しなければならぬ。

 その樣な譯で、最近はラーメンフオーを拵へる事が多いのだが、そればかりともいかぬ。そこで目先を變へて「味附きチキンあぶり燒き」を拵へる事にした。香辛料を利かせたスパイシーな料理で、大會の參加者も氣分轉換に良いだらう。鷄肉を大量にウイレムスタツドに持ち込み、そこで料理名人に手傳つて貰ひ、都合七百皿程を用意した。意氣揚々とナポリへ運び、店長に代理販賣を依賴して、今回も無事補充を終える事が出來た。

 クミンとガラムマサラの事を忘れてゐた。その後ラーメンフオーを追加で拵へたりして、何度か商館には足を運んでゐるのだが、店長は一向に代金を払おうとせぬ。なんでも原稿料とやらが出るようであるが、利息が大ひに膨らんだクミンとガラムマサラの代金も払われるに違ひなかろう。

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うーん、最初の段落が書きたくて、思いつきでついついやっちゃいました。勿論、夏目漱石『坊っちゃん』です。今回は旧字旧かなにしたかったので、たまたま手元にあった昭和33年版を底本にしましたが、文体はなるべく似せたものの、かなり自分の文章になってしまいました(゚∀゚) やってることが清水義範っぽくなってきたねw (もちろん、到底彼の足元には及ばないわけですが)

旧字は全然大丈夫なんだけど、旧かなはまだちゃんとマスターしてないことを思い知らされました。精進しないと。
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by yanapong | 2009-01-29 19:43 | 大航海
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